◇手足のしびれや舌のもつれも起こる
首の動脈硬化(正式には「頸動脈硬化症」と呼ぶ)が、脳梗塞の重大原因になったり、心筋梗塞を発見する手がかりになったりすることを、前の記事で説明しました。
首の動脈硬化(動脈の老化)は、血管の断面積の80%がつまっても、自覚症状が現れないことがあります。そのため、知らないうちに首の動脈硬化が進み、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞に襲われることもあります。
といっても、首の動脈硬化を示す自覚症状が、ないわけではありません。ここでは、首の動脈硬化があるかないかを見分ける、自覚症状について紹介しましょう。
首の動脈硬化による初期の自覚症状として知られているのは、めまいや立ちくらみです。
頸動脈(首の動脈)につまりのある人が、ちょっと首を動かすと、そのはずみに頸動脈が圧迫され、血流が妨げられて止まることがあります。頸動脈は脳に血液を送る重要な動脈。頸動脈の血流が少しでも止まれば、脳が血流不足に陥って、めまいや立ちくらみを起こすわけです。歩いているときには、ふらつくこともあります。例えば、後ろを振り向いたときに、めまいや立ちくらみが起こるのは、首の動脈硬化における自覚症状の代表といえるでしょう。
ところが、首の動脈硬化がもっと進めば、頸動脈がさらに狭くなるので、首を動かさなくても、めまいや立ちくらみが起こるようになります。
頸動脈がつまって脳が血流不足になれば、片方の手や足がしびれたり、食事のときにはしを落としたりすることもあります。このように、脳が血流不足になった結果、一時的に起こる症状を、「一過性脳虚血発作」と呼びます。
一過性脳虚血発作について注意したいのは、それが脳梗塞の前ぶれであること。一過性虚血発作を起こした人は、1ヶ月以内に21%の人が、1年以内に50%の人が脳梗塞を起こしたという報告もあります。
首の動脈硬化による自覚症状としては、視力が一時的に低下する(たいていは、数分後に視力は元に戻る)こともあげられるでしょう。この症状は「黒内障」とも呼ばれています。
頸動脈は、目にも血液を供給しています。そのため、頸動脈の血流が止まると、目の動脈に血液が行かなくなり、物を見る目の働きが落ちてしまうのです。ただし、視力が低下するのは片目だけで、両目の視力が低下することはまずありません。目の動脈は左右にあり、両方が同時につまる可能性は極めて低いからです。
首の動脈硬化が起こると、首の脈に異常を感じることもあります。手の人さし指と中指を、頸動脈に当ててみましょう。頸動脈が正常なら、ドクッ、ドクッと、脈拍が規則正しく打たれるはず。ところが、脈が小刻みに震えたり、ふつうの脈拍のあとに小さい拍動が起こったりするときは、動脈硬化の可能性が大きいといえるでしょう。
※引用 夢21 2007年8月号掲載記事 (c)わかさ出版 |