家族みんなでサプライズ!が脳に効く!!
◇3歳までのびっくり体験が人生を左右する?
まず、びっくりすると脳がどういう反応をするかをお話ししましょう。
基本的に、びっくりすると大脳の中の扁桃核という部分、両目の奥のあたりにあるのですが、そこが反応します。扁桃核は危険を瞬時に判断して回避するための指示を出すところ。普通、記憶は大脳の中の海馬というところでデータを照合して呼び出すものなんですが、毒ヘビを見たときに『この縄状のものは?』といちいちデータを照合していたら、時間がかかって危険でしょう。そこで命にかかわるような刺激には反射的に扁桃核が反応するような仕組みになっているんです。そのため、びっくりとか痛みとか恐怖などを伴った記憶はここに集められるんですね。
成長の第1段階である3歳まではまずここに蓄積されるようなびっくりを体験させることは大切。『グラグラしているところに乗ると転ぶ』とか『やかんを触ると熱い』といった、生きていくために必要な、危険を回避する知恵を身をもって学ばせることが重要だと思います。
といっても、親ががんばってびっくりを与えなくても、子どもにとっては毎日が新鮮なびっくりの連続。大人にとってはなんでもないことも、子どもにとっては大発見なんです。はじめてだからうまくいかないことも多くて、その中で子どもなりにいろいろ学習していくのです。
そんな原体験を形成する3歳までが成長の第1段階。それ以降はもっと幅広い、さまざまな感情を伴うびっくりを感じるようになっていきます。原体験が少ない子どもと多い子どもでは、その後感じるびっくりの質が違ってきてしまうんですね。もちろん多い子どものほうがさまざまな物事から自分なりのびっくりを感じ取れる脳になっている。そういう意味でも、3歳までのびっくりにはとくに重要な役割があるといえます。
◇子どもの脳に、いい影響を与えるびっくりとは?
では、子どもの脳にいい刺激を与えるのはどんなびっくりでしょう?
それは「五感をフルに使ったびっくり」です。見る、聞く、触る、におう、味わうことから得られる刺激をバランスよく体験すること。家族で公園に行って、きれいな花を見て、それを摘んでみたり、においをかいでみたりという刺激です。
逆に、悪いびっくりは「五感のバランスが悪いもの」。たとえば、テレビばかり見せていたり。それがどんなにすばらしいアニメであっても、視覚刺激という一方向の神経系しか使っていないことになり、脳の発達も偏ってしまうことになるのです。
ただ、そこでお母さんが横にいて、話しかけながら一緒に楽しむ、というと少し影響は違ってきます。
じつは、子どもの脳にとっては、何にびっくりするかよりも、そのびっくりを得たときに、お父さんやお母さんとそのびっくりをどう共有するかのほうが重要なのです。
その理由を解くカギは、シナプス。じつはそのシナプスの発達と親子の関係性の深さが大いに関係していることがわかっているのです。
まず、脳の神経細胞はニューロン(神経細胞の本体)と、そのニューロンから出ている樹状突起と、樹状突起から延びた軸索(神経線維)でできています。刺激が伝わることによって軸索が延び、新たな樹状突起につなっがっていく。そのつなっがた部分がシナプスで、脳の中に新しい回路ができたことになります。脳の神経細胞の数は増えないけれど、シナプスは刺激を与えればどんどん増える。そうして脳の中の回路を増やして密にしていくことが脳のいい発達といえるんですね。
◇親とのスキンシップが多くのシナプスをつくる
このシナプスの数は、スキンシップと密接に関係していることが実証されています。
小猿を(1)普通に母猿と触れ合うことができる状態、(2)鉄格子ごしに触れ合うことができる状態、(3)ガラス張りの部屋に入れ、母猿の姿は見られても触れ合うことができない状態にして、それぞれのシナプスの発達状態を見てみたところ、母猿に抱っこしてもらえる(1)の小猿がいちばん発達していたんです。(3)の小猿とはまるで違い、(2)ですら(3)よりははるかに発達が見られたんです。
さらに、母猿にも影響があって、スキンシップがあったほうが母性が出るという結果が出たんですね。これだけでも親子にとって、スキンシップがいかに重要かがわかります。
親にとって子育ては、これまでの人生で凝り固まった脳を捨て、子どものような瑞々しい脳を取り戻すチャンスなんですよ。目の前で子どもが見せるさまざまなびっくりを見逃さないよう、そして一緒に楽しむこと。子どもにとって毎日がびっくりの連続であるように、子育て自体も親にとっては本来びっくりの連続のはず。そこにどれだけ新鮮な驚きや感動を感じられるか、親にとってはそこが大切であり、それがそのまま子どもにも影響するといえるのです。
また、びっくりするポイントは1人ひとり違います。そこをしっかり見てあげることで、お子さんの個性を発見できることもあるのです。
最後に、子育てをすると女性ホルモンが出てきます。それによりやさしさが増し、肌もツヤツヤしてくるといいますね。それに、びっくりを子どもと楽しめるということは心にゆとりがある証拠。そんな精神状態は美容にもいいはずだと思いますよ。
別冊エッセ シュルプリーズ 2009年WINTER
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