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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  寅さん(1996)
 

寅さんが亡くなった。

自慢じゃないが、ぼくは寅さんシリーズ全48本を全部観ている。事の発端は4年ほど前に「寅さんの心理分析をしたらどうか。」と言われた事に始る。当時、寅さんの謎本、サザエさんの謎本がちょっとしたブームをおこしていた。その内の一冊の著者から話を持ちかけられたのだ。

実は、それまでは寅さんシリーズ一本も観た事がなかった。50本近くもビデオを観なくちゃならないのかと思うと少々うんざりしてしまったが、もとより中々いやと言えない性格ゆえ引き受けてしまった。

早速、レンタルビデオ屋で5本ばかり借りてきて、ペンとノート片手に観始めた。観始めて、後悔してしまった。とんでもない仕事を引き受けてしまった事に?いやいやその全く反対。何て凄い作品をずっと観なかったのかという後悔だ。分析どころの騒ぎじゃなかった。恥ずかしながら、48本観て、48回泣いてしまった。

当時、テレビでは「高校教師」という番組が社会現象になるぐらい高視聴率をとっていた。話の種に観てみた。近親相関、レイプ、殺人、暴力などがこれでもかこれでもかとでてきた。見終わった後には不快感しか残らなかった。何の解決もなかった

寅さんシリーズの凄さはここにある。登場するマドンナたちはみんな辛い過去を背負っている。高校教師にでてきたようなこと(近親相関、暴力などなど)を背負って生きている。そして旅先で寅さんに会う。映画の中では具体的には何も語られていない。ただ一言寅さんがいう。「そうかい、そうかい。いろんな事があったんだよなあ。」続けて、「今度辛い事があったら、東京は葛飾柴又の帝釈天の参道にこぎたねえとらやっていう団子屋がある。寅にいわれたと言って尋ねてみな。よぼよぼのじじいとばばあが面倒見てくれるからよ。」

マドンナ達は意を決してとらやを尋ねる。そして、暖かい人との触れあいの中で傷ついた心を癒して、そしてまた人生に旅立って行く。

実は、この映画自体が心理療法なのだ。マドンナだけでなく観ている人まで癒される。高校教師等にはない。これが寅さんの凄さだ。

最近、健康ブームのため色々な本がでている。読むとどんどん健康に不安になるだけのものも少なくない。煽るだけ煽って、何の解決も出来ない。何の安心観も得られない、そんな本が多すぎる。なかには、確かに学問的にはある程度正しいかもしれないが、読んだほうが現代の医療に対して不信感しか残らないようなものまで出現している。科学者としてはOKだけど医者としては???。いくら、抗癌剤の事を非難しても何の解決にもならない。

患者さんはとらやに行きたいだけなのだから。

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