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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  本を出しました(1997)
 

単行本を出した。「癒しのタイムマシン」(泉書房)という本だ。
ぼくにとっては「からだSOS」(土屋書店)に次いで2冊めにあたる。実は書いた順番からいうと第一作めにあたる。

話は五年前に遡る。ストレスを解消する本を出そうということになり、百科事典で有名な大手の出版社の担当に企画を持込んだ。企画の内容は懐かしい写真と懐かしい音楽のCDで子供の頃の自分に帰ってもらい、ストレスの原因の子供時代のトラウマを癒してもらおうというものだった。企画担当者は二つ返事でOKをだし、われわれは写真担当、文章担当、音楽ならびにイメージングのナレーション担当に分れ製作を開始した。製作は楽しかったが、連日大げんかの繰り返しだった。

作者であるぼくの意図は、ストレスを解消する為には、単に気持ちいい音楽を聞くとか、単にリラックスできる訓練をするだけでは対症療法となるだけで、矢張りストレスのおおもととなる子供の頃からの「心の癖」ともいうべきものを直さなきゃだめというもの。ところが、当時ではそんな小難しい事は受入れられず、けんけんがくがくの議論が続いた。
一体なんの為に子供時代にかえらなきゃならないのか。イメージングがどう役にたつのか。
ストレス解消の為の本作りが我々のストレスを蓄積させた。

そして、悲劇は起こった。数か月の時間と労力とお金をかけて本は完成を目前となった。なんと担当者の手違いで出版できなくなってしまったのだ。我々に残ったのは、借金と失望感。人を恨むには既に心理療法を学びすぎていた。やるせなさをどうすれば良いのか判らなかった。

時は過ぎ、時代は目まぐるしく変化した。
本屋さんの店頭に「なんとか革命」等という本まで並ぶような時代となった。事態はそれでも好転しなかった。本の企画をいろいろなところへ持込んでも答えは同じであった。
「CD付きの本なんてうれっこないですよ」「CD無しで文章だけならねえ」

それはちいさな偶然から始まった。偶然は偶然を呼び、あっというまに本の出版が決まった。まず、泉書房の社長にCDが渡った。団塊の世代の彼は人生の岐路にたたされていた。CDをきくうち彼のなかの癒されるべき問題は徐々に解決し、そして彼は彼自身の大切さに気づく事となった。写真が彼の手に渡った。彼は、リストラされた人、子供のこと、パートナーのことで苦しんでいる人に是非この本を紹介したいと考えた。彼の情熱が今回の出版を実現させた。

「本はおのが運命を生きていく」という。「癒しのタイムマシン」は実に数奇な運命をたどりつつある。難産のすえ生まれた彼の一生はいかなるものか。短命なのか長生きなのか。出世するのか、日蔭ものなのか。でも、そんなことはどうでもいい。生まれた事が大切。少なくとも何人かは癒しているのだから。

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