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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  素晴らしい時代が幕を開けた(2003)
 

昨年は、多くの企業がデフレに苦しみ事業を縮小した。追い討ちをかけるように大手ハンバーガーチェーンまでもが赤字に転じた。利益だけでなく、狂牛病騒ぎに始まり、雪印、日本ハムなど多くの企業がその信用を失っていった。

一方、島津製作所の田中さんはノーベル賞を取り、一躍時の人となった。

時代は組織やブランドではなく、個人の信用を査定するようになった。会社や組織はその信頼を判定するには巨大となりすぎた。個人ならば自身の責任において判断することができる。小泉人気と自民党のギャップも件の由であろう。

将来が予測不能の時代は不安感を募らせる。しかし、実は恐れる必要は全くない。エネルギーというものは不思議なもので似たようなものをひきつけるからだ。

愛というのがどういうものかは知らないが、愛は愛を引きつける。これは事実である。崇高な自他愛は自他愛を引きつけ、程度の低い自己愛ならば同じような自己愛を集めて修羅場と化す。怒りにかまければ怒りに包まれ、不安を持っていれば、不安定な状況が悪循環を始める。被害者意識は幼稚な自己愛しか生まず、ヒステリーの嵐に巻き込まれていく。

この原則を持ってすれば、問題解決はいかに自身のエネルギーレベルを高めるかにかかっているようである。

甘っちょろい、現実は残酷だといわれるかもしれない。しかし、なんと言われようとも事実であり、真理である。患者さんを見ているとよく分かる。治っていく人はある共通の性格があり、治療が的確でもぐずぐずとする人には共通の性格や考え方がある。

賛同しようがしまいが、これが僕の結論である。医者という職業は好むと好まざるにかかわらず、人の人生を覗き見する。そこで得たひとつの真理である。

150億個の脳細胞は世の中の森羅万象を受信し理解するには少なすぎる。言い換えれば、世の中の情報を処理するには、コンピューターの容量も解析速度も小さすぎるのである。そこで、脳は興味の対象外のものを削除するという機能を兼ね備えている。

たとえば、白い壁に掛かった絵を見ると、我々はその絵に引きつけられ、壁のことは気にならなくなってしまう。実際には網膜上には壁も映りこんでいるのだが、余計な情報は自動的に削除されてしまうのだ。よって、壁の隅っこにある「しみ」には気がつかない。

この削除機能が欠如したのが自閉症の患者さんだと言われている。すべての情報が一気に脳へ集まり、処理しきれなくなってしまうのだ。情報の無秩序な侵入は苦痛となり、結果として閉じこもる。

その一方で、情報を削除する能力も、裏を返せば周囲が見えなくなってしまう危険を持ち合わせる。

不幸を抱え込む多くの人々はこの情報を削除する能力を誤って使用しているようだ。自分自身で作り上げた額縁から目を離せないでいる。視線を離せた人だけが、部屋の片隅の宝石の原石に気がつくことができるのだ。

時代は、額縁をはずす作業を要求している。僕はしばし壁を見ることにする。

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