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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  「OH!診」おしまい(1997)
 

僕の出演していた「OH!診」という番組が100回をもって終了した。よくもまあ、2年間も続けられたとわれながら感心する。テレビに出る事に関してはずぶの素人の僕を支えてくれたタレントの高見知佳ちゃんはじめ友人のディレクターのK氏、数多くのスタッフの皆様に唯々感謝。

平均の視聴率は3%前後、一般の番組にしては悪い視聴率だが、この手の医療番組にしては結構いい線いったんじゃないかなと思っている。特に他の健康を扱った番組の人たちから、「なんであんなところ(ビルの屋上や雪のちらつく中等)で撮影する必要があるのか」「何も医者をトイレにすわらせる必要もないのでは」などという御批判を頂く度に「ざまあみろ」と思ってしまう。結構、みんな真剣に見てくれていたんだなあ。フフフフ・・・。

実際、医者の中からの批判も多かった。途中で、もう番組を降りようかなと思った事も何度もあった。単純にいって僕は勤務医だから個人的には番組に出る事で何のメリットもない。ましてや、痛くもない腹を探られたらなおさらだ。そして、そんな僕を奮い立たせてくれたのが、多くの視聴者の皆様からのファックスや手紙だった。「頑張って下さい」というものから、中には放送を見て、「感動しました。死ぬのやめます」といったものさえあった。萎えてくる根性を奮い立たせるには十分すぎた。

私事ながら、僕が医者になろうと決心したのは、浪人が決まった春、何の気なしに読んだ一冊の本がきっかけだ。古本屋で当時20円で買った「赤ひげ診療譚」が僕の人生を決めた。科学者であり、人格者である赤ひげ。その赤ひげを憎み、成長し、敬愛するようになる保本登。その保本登に自分をだぶらせた日々。

大学病院を今だくびにならずにいる僕は、恐らく、脳神経外科の医者としては、最低レベルの医学的知識はもっているのだろう。そして、「OH!診」にいった現場ではその知識はあまり必要とされなかった。現場で本当に必要とされたものは、治療者と患者の関係ではなく、人と人のふれあいであった。人をなおす事より、癒す事の重要性とむずかしさ。

どうやら、もう一度読みなおす必要が出てきたようだ。

とある雑誌に大学病院の医者の言葉として面白いものが出ていた。「3分診療がだめとかいうけれど、3分で診断がだせないような医者こそだめだ」ある意味で名言だ。そして、このうらにある彼の悩みと憤りが僕の心に響いてきた。本当はもう少し患者さんと接していたい。病気の治療だけでなく、患者さんをトータルで癒していきたい。

人と人がふれあうこと、それは歯車が接する事に似ている。片方の歯車のピッチが変るともう片方も変化する。結局、人を癒す事はすなわち自分を癒す事につながる。そして、自分を癒す事こそが人を癒す事になる。

医者と患者の間の垣根をとること、そしてそれが自分自身を癒す事になるという発見。これが、僕がこの番組で貰ったものだ。

次の企画は、・・・未だ、ないしょ。

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