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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  問答無用(1998)
 

相変わらず嫌なニュースが多い。

中学生が先生をナイフで刺し殺してしまった。警官からピストルを奪おうとしてナイフで脅して逮捕されてしまった。
ナイフで銀行強盗をしようとして失敗してしまった中学生。似た様な事件が続く。

凶悪と言うには、被害者には申し訳ないが、余りに幼稚過ぎる行動である。確かにある種この年齢の子供たちの間には流行と言うものがある。かつては、自殺がはやった時期もあった。校内暴力、家庭内暴力が吹き荒れた時期もあった。(勿論現在も存在する)いじめもある種流行と言わざるを得ない部分がある。

それが今はナイフなどを使った暴力事件というものになってきた。

かつて、私が子供であった時には、価値観と言うものは多様であった様に思う。勉強の出来るやつは試験の時はヒーローになれる。脚の早いやつは体育の時間にはヒーローになれる。草野球のホームランバッターは常に「4番長島」のニックネームを貰えた。喧嘩の強いやつは、昼休みになると生意気な不良にやきを入れてくると言って、体育館の裏へでかけていった。

先生の中には本当に恐い先生がいた。問答無用で殴られた。あいつだって、同じ様な事をしているのにと思っても、見つかったものが悪かった。口答えなどしようものなら、その後の運命はおして知るべしだ。

そうかと思うと、授業中に「おい、マッチ貸せ。どうせ(タバコ)吸ってるんだろ。」という理科の先生もいた。

「戦争になったらどうする?」という質問をする先生もいた。戦争はいけないと言う僕らに対して、「親、兄弟に銃を向けられたら、即座に敵を撃ち殺せ。」といった。

善悪やものの価値と言うものが相対的で、多様性を持つ事を知らず知らずのうちに叩き込まれていた。

今の学校では価値観が統一され過ぎてしまっている。運動会で一番をとっても表彰しない。絵が旨くても受験には関係しない。ただ、ただ偏差値のみが価値観のすべてとなっている。走るのが早いやつを表彰しないなら、偏差値等をつける事自体がおかしい。百歩譲って偏差値のみが価値観のすべてであるならば、こんな矛盾はない。教師になる為のいわゆる教育学部というものの偏差値はさして良くないはずだから。

恐らく教師の中のアイデンティティーの欠如が子供たちに反映しているに過ぎないのでは。だから、日の丸を掲げる事に猛反対する。じゃあ、オリンピックをみて涙なんか流すな。どこの国に、自分たちの国旗に敬意を表さない国があるのだろう。

勿論、家庭の問題もある。「お父さんの様になっちゃだめよ。」という母親は一体全体どういうつもりでその父親とセックスをして子供を産んだのか。あんたの責任はないのか。

心の教育が必要といわれだした。きっと、すぐにそれにも偏差値をつけだすだろう。世の中は諸行無常。統一された価値観等くそ食らえである。

親友の娘が面白くないから高校をやめるといいだした。親友はあわてて私に電話をよこした、娘のへ理屈に押切られてしまうと。

「問答無用。」そう、言っておいた。

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