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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  コロニアルスタイル(2001)
 

またまた、ペルー・ボリビアに行ってきた。今回は紀元前1500年頃栄えたティアワナク文明を見に行った。

アンデス文明の伝統にもれず、太陽を神とし、発達した天文学は、正確に春分、秋分の時期を決定する事が出来た。

石造りの階段状ピラミッドと、蛇に象徴される雷雨を祈る神殿は、当時としては最高の技術を費やして作られている。

巨石による建造物やピラミッドの中に精巧に作られた水路などは、いまだ持って大きな謎であり、現在の技術を持ってしても不可能な部分も多い。

高度4000メートルの高地にかくも偉大なる文明を作ったのは何故か。文字の残されていない文明は、我々を想像の翼に載せ、遥か昔の大空へとはばたかせる。

これらの文明を引き継いだインカ帝国は紀元1400年から1500年代にその絶頂期を迎える。しかし、その栄華も長くは続かなかった。

3000年もの永きに渡ったアンデス文明は、たった100名足らずのスペイン人によってことごとく滅ぼされた。ものの本によれば、当時1100万人いた人口は80万人へと激減したという。

スペイン人によるアンデス文化の曲解は、文明の真の姿をはるか遠い想像の世界へと追いやった。現在ではインカの誇りを持った人々によって、細々と受け伝えられているだけである。

さらに、スペインによる植民地政策は重大な後遺症をこの国に残してしまった。絶望的な貧富の差と支配者階級の存在、誇りを捨てることを強要された日々。経済的な貧しさだけではない。文化をなくした代償は日本では想像が出来ないほどの大きなものである。

物乞い。命令口調でないと注文さえ忘れられてしまうレストラン。明日のことは考えない、否、明日がないからこそ今日のことを考える国民性。服従することが人生の一部となった人々。

ペルー人の友人が言い放った。

「コロニアル(植民地的)」と。

南米でアメリカの潜水艦と日本の水産実習船の不幸な事故を聞いた。ワシントンポストは、「一体いつまで謝ればいいのか」と訴える。一方、その同紙で、「謝ることを忘れたアメリカ人」というコラムが掲載された。

時を同じくして、新しい教科書問題で近隣諸国からの反発が報道された。「日本人はいつまで謝れば済むのか」という言葉が三大紙に掲載された。

半世紀前我が国は、アジアを欧米の植民地支配から開放すると言う大義を掲げて、植民地にしていった。この矛盾。

謝るということは、相手に伝わらなければ意味がない。伝える為には条件がある。それは責任を取るということ、そして、そのことを信頼されるということ。

多分、我が国は責任の取り方と信頼と言う点で、他国に不安を抱かせているのであろう。我が国だけではない。潜水艦の事故においてアメリカしかりである。

卑屈になる必要はない。信頼を得るためには、正義と良心に従う独立国であれば良い。嘘と欺瞞に満ち、自国民にすら信頼されない政治。もとより他国に信頼せよという方に無理がある。

我々は何に支配されてしまったのか。

「コロニアル」

悲しげに言い放った友人の言葉が妙に心に響き渡ったのは、フォルクローレの音楽のせいだけだろか。

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