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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  二つの正解(1999)
 

最近、テレビドラマで病院を舞台とするものが多く放映されている。本来、あまりに現実と違うので、なるべくなら見ないようにしているが、そのうちの一つに僕の友人が出演しており、仕方なく見る羽目になった。

くだんのドラマは正義感あふれる医師と、患者さんを診るとやたらと手術したがる医師とのライバル関係を中心に話が展開する。3−4回目であったと思うが、主人公の医師が外来で1時間も患者さんと話し込んでほかの医師が迷惑を被るシーンがあった。もし、このシーンを見た医療関係者の方々はきっと僕と同じことを感じただろう。

「こいつ、何考えてるんだ。腕が悪いなあ。」

と。

そもそも、3分間診療が悪いと言っても、こと診断治療と言う事のみ考えれば、極論ではあるが、3分もあれば大概の病気の診断は完了することができる。もし、できないとすれば、その医者の腕に問題がある。勿論検査などは、別の話で、その結果があるとすればの話だ。

大病に関してのムンテラの時間は取らなくてはならないが、それにしたって、外来のほかの患者さんに迷惑のかからない時間帯とするのが当たり前であろう。

脚本がなっていないと言えばそれまでだが、じつは、ここにはそれだけでは済まされない問題が眠っている。

少なくとも、患者さんがわから見れば、極端ではあるが、そのように映っていると言う事は大切だ。我々は、このことを真摯に受け止めねばならないだろう。いくら自分はと言っても結局相手に伝わっていなければ言い訳は出来ない。

一方、作り手がそのように見させる事で、何か大切なものの視点をずらさせている事も見逃してはならない。ある時代の人々に共通の似非ヒューマニズムを振りかざして、魔女狩りにも似た決着をつけようとするこのマスコミ独特の手法に決して惑わされてはならない。

例えば、ある問題に対しての街頭インタビューを見ると、明らかに、作り手側の論点に添った回答が多く見られ、あるいは、その順番が最後に来たりとなっている事にお気づきだろうか。

だから、マスコミは信用できないと言う短絡も如何なものか。それをそのまま信用する我々にこそ問題の本質はあるのではないか。

果たして、正しい解答などが存在する問題などどれくらいあるのだろうか。我々は、解答の存在すると言う幻想に振り回されているのではないだろうか。いやいや、実はそのことがわかっているからこそ、目を背けているのかもしれない。

話は飛ぶが、日の丸君が代問題もその一つだろう。丸かバツか、実は、二つの正解がある問題なのだ。

牛歩戦術など笑止千万、全く子供かと思ってしまう。そんな例えは牛に対して失礼と言うものだ。第一、民主主義なのだから、もし、今回そうなったとしても、それをまた撤回することだって可能なはずである。正々堂々としていない。

二つの矛盾する正解を持った問題に直面する事は、知恵を持つ人としての誇りを持つと言う事である。

21世紀まで後1年あまり、我々のなくした誇りを取り戻すには、あまり時間がない。

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