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このエッセイは『ばんぶう』(日本医療企画)に掲載されたものです。
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  切れる犬と子供たち(2002)
 

外国の航空会社の機内誌に面白い記事が載っていた。欧米ではペットの精神科医というのがはやっているという。

そもそも、犬は犬として扱われることを望んでいる。それを、チャン付けし、まるで人間のように扱ってしまう飼い主が増えた。主従逆転すら見られる。

犬にとってはしごく迷惑な話しだ。

本来命令されること、服従することで進化を果たし、家族の一員として存在することが可能になった犬は、人間に命令することには慣れていない。

そういった不当な扱いを受けた犬は、人間が出て行こうとするとワンワンと吠え、不機嫌な状況ではがぶりと噛み付くことすらある。

こういった犬の増加に対して、くだんの精神科医が大活躍しているという。たとえば、お座り、待ては言うまでもなく、食事は飼い主が終わってからとか、散歩の時にはリードでコントロールするといった細かい指導をする。所謂しつけをすることが彼らの幸せなのだそうだ。

しつけをされた犬は切れることがなくなる。犬だけではなく、飼い主にもそこのところをわからせる。犬の精神科医とは、結局は飼い主自体を教育するということになりそうだ。

さて、昨今の少子化は子供を大事に大事に育てすぎる風潮を生み出してきた。過保護に育てる傾向がまかり通り、結果として親や大人に指示をする子供が増えてしまった。

未熟な脳は教育やしつけによってフォーマットされる。フォーマット不足の脳は時に機能不全を生じる。この機能不全の状態が「切れる」ということである。

誤解がないようにあらかじめ言うが、決して子供に人権がないなどと言っているわけではない。子供は未熟であり、しつけという形である種の序列をおぼえさせる必要があるということである。

もし、しつけがなされずに序列が与えられなければ、子供のアイデンティティーはよりどころを失うことなり、結果として不安定極まりないものとなる。

しかるに現代では、学校においてのしつけの範囲は狭められ、家庭におけるしつけも(本来ならばここが基本だが)うまく機能していない。

子供にとっては至極迷惑な話である。

学校での体罰やしつけの禁止は、あくまでもそういった序列やアイデンティティーを失った似非ヒューマニストの教育者と父兄が原因で起こった。しっかりとした理念と責任を持った教育者にとってはいまだに有効な手立てのひとつである。

かつては、名物教師や年取った担任の先生が存在した。しかるに今や給与を上げるためには教頭試験が必須であり、そのために経験豊かな担任は消失した。しかも、その若い教師を育てる余裕は父兄にはない。

国旗掲揚、国歌斉唱も同じ理由で必要なことなのである。一部の人々は大戦中の旧軍の行為を日の丸に置き換えて非難する。反省すべき点は真摯に反省すべきとしても、常に犠牲者は子供たちである。基本的なよりどころとなる国家感が存在しない子供たちに、成人してから「いまの若い者は」というのは酷な話である。

閑話休題。世の中のことに目を移せば、我々は犬や子供だけではなく、政治家や役人のしつけを忘れてしまった。彼らにとっては至極迷惑な話かも知れない。

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